【ホンダとソニー】新しいEVビジネスモデルの試金石

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ホンダとソニーが組んでEV共同開発、販売する合弁会社を設立する背景を知りたい

3月4日、ホンダとソニーグループが、EVを共同開発し、販売する合弁会社を設立すると発表した。2025年にも発売する計画という。

この、それなりに名の知れた大きな異業種の企業同士がEVで協業するビジネスモデルは世界初だと思われる。というのも、ブランドはこれから検討するとのことで、そのクルマのバッジはソニーでもホンダでもないからだ。

AppleもEVを計画しているとの噂が絶えないが、それはあくまでAppleのブランドで、設計のみを担当し、iPhoneなどと同じく、自分では工場を持たないファブレスを専ら貫くと言われている。Googleカーもしかりだ。

ソニーもCESなどでセダンやSUVタイプのモデルを発表してきたが、その際にはソニーのブランドでの発表だった。しかし今回発表したのは、ホンダと組むに当たって以前発表したモデルを造ってもらうパートナーを見つけたという事業モデルではない。理由は4つある。

一つにはホンダにソニーブランドのEVを作ってもらう訳にはいかない。ホンダのDNAからして、ソニーに頼まれたものをそのまま請け負って作るビジネスは考えないであろう。もう一つは逆に、ソニーがホンダブランドのEVの画像処理やエンタメ部門を担当するだけというわけにもいかないからだ。ソニーが志向するのは、EVに対して単なる部品サプライヤーに留まらず、次世代のモビリティの大本命であるEVビジネスにおいてソニーの存在感を発揮し、プレゼンスを確立することを志向しているのであろう。例えば、日本企業で規模でこのコンビと張れるペアとしては、トヨタとパナソニックが考えられる。パナソニックは、確かにEVのコア部品である電池で世界の一角を占めようとの勢いはあるかもしれないが、クルマを造ろうとの意思はパナソニックのこれまでの発表からは感じ取ることができず、今回の合弁会社のような動きには発展することはないであろう。

3つ目にEVはエンジン車よりも部品点数が少なく、圧倒的に参入障壁が低くなったとはいえ、ソニーが全部自前で設計開発をやることはリスクや時間がかかる恐れがあり、実績のある車両メーカと組むという判断は合理的であること。実際ソニーグループの吉田社長は「完成度の高いクルマを作り上げるのは容易ではない。2年開発を続けてわかった」と語っている。さらにクルマという耐久消費財の中では大きな商品を流通販売するには独自のインフラが必要となってくるが、ホンダの販売網は世界中にあり、その点ではソニー側にとって、間違いなく時間を買うメリットもある。4つ目にホンダから見て、目まぐるしく変化する業界において、新たなビジネスモデルを追求することは、新たな種まきとして好適であり、かつ単独で新規ビジネスというよりは、ソニーというブランドも技術力も補完できるパートナーと組めるほうがよりリスクが低くできるといった判断ができることだ。実際今回の協業は21年に始まったホンダの若手社員のプロジェクトの一環でソニー側に新しいモビリティについての提案を持ち掛けたのがきっかけだという。

課題は、ホンダからみて、合弁会社のEVがホンダよりも売れすぎた時に、飲み込まれないかの懸念がある。その場合、ソニーの言いなりになりかねない。又、昨今のように限られた半導体やその他の部品をホンダに回すのか、合弁会社のEVに回すのか、難しい判断を迫られる局面に遭遇することも考えられる。そのリスクを冒してでも、新しい可能性に賭けなければ生き残れないとの厳しい現状分析にも基づいているのかもしれない。

プレスリリースで「ソニーとHondaは歴史的・文化的にシンクロする点の多い企業」との表現があったが、既にできあがったソニーとホンダのブランドを継承しつつ、それらを名乗らない新しいブランドでのEVがどうなっていくのか。後に続く企業が出るのか。注目である。

Photo by Sophie Jonas on Unsplash

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