【退職を迫られたら】交渉術#1 法律の力を活用【対抗策はこれだ】

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過去判例など、法律の力を最大限借りて退職を迫る会社に対抗したい

過去の記事で、突然退職勧奨されても、その場では絶対にサインをせずに、弁護士や労働組合など周囲に相談することを紹介しました。今回は、サインをしない前提で、その先に必要となってくる、会社への対抗措置を、交渉術のシリーズとしてお送りします。第1回は法律で、判例を持ち出す方法です。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構では、雇用関係紛争判例集がまとめられていて、「10.雇用関係の終了及び終了後」の「(82)【退職】肩たたき」に参考となる判例が記載されています。

ポイントの4つ目に以下の通りあります。

退職の勧めを拒否した者に対する不利益な措置(優遇措置の不提供、配置転換、懲戒処分、不昇給)は違法となる。ただし、対象となる労働者や使用者側の事情によっては、不利益な措置が違法とならない場合がある。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構

事例として、市教育委員会が教諭にたいして数年にわたる退職を勧めてきたが、応じないでいると3~4か月の間に11~13回にわたり出頭を命じ、長いときには2時間におよぶ退職勧奨をおこないました。それらの行為は違法であり、精神的苦痛を受けたとして、市と教育長及び次長らを被告として教諭が訴えをおこしました。

最高裁まで争われた裁判は二審の判決が支持され原告の勝訴。以下二審の判決の要旨:

A(市教育委員会)の行った退職勧奨は、多数回かつ長期にわたる執拗なものであり、退職の勧めとして許される限界を超えている。この事件の退職勧奨は、従来の取扱いと異なり、年度を超えて行われ、また、X(教諭)らが退職するまで続けると述べられており、勧奨が際限なく続くのではないかという心理的圧迫をXらに加えたものであって許されない。Xらが勧奨に応じないならば、組合の要求に応じないと述べたり、提出物を要求したり、配転をほのめかしたりしたことを考えると、Xらは退職勧奨によりその精神的自由を侵害され、また、耐えうる限度を超えて名誉感情を傷つけられ、さらには家庭生活を乱されるなど、相当な精神的苦痛を受けたと容易に考えられる。したがって、この事件における退職の勧めは違法であり、Y1(市)は、Xらが被った損害を賠償する責任を負う。

最一小判昭55.7.10 労判345-20

そのほかにも、以下のような事例が違法と判断された判例があるので、詳細は記事を参照されたい。5番目は、被告側の合理性が認められた事例です。

  • 退職勧奨を拒否し続けた後に退職した者に対して、退職勧奨に応じた場合に与えれられる優遇措置が与えられない不利益な措置は違法になる(鳥取県教員事件 鳥取地判昭61.12.4 労判486-53(詳しくは、(14)【女性労働】を参照)。
  • 退職勧奨を拒否した者に対して、業務上の必要性のない、嫌がらせ目的の配転を命じたり、懲戒処分手続を踏まずに、懲戒処分として労働者の降格を行ったりする場合には、それら命令や処分は違法となる(フジシール事件 大阪地判平12.8.28 労判793-13)。
  • 女性職員が違法な退職勧奨を拒否して以降、昇給させないのは、違法な不利益取扱いであり、使用者は損害賠償責任を負う(慰謝料を含む約80万円を差額賃金に相当する損害賠償額として原告の請求を一部認めた(鳥屋町職員事件 金沢地判平13.1.15 労判805-82)。
  • 「もう君は私の管理職の構想から外れている。」及び「自分で次の就職先を見つけてはどうか。ラーメン屋でもしたらどうや。」等、繰り返し行われた退職勧奨を拒否した後、嫌がらせと思われる転籍命令、さらには定年間際の59歳時に出向期間5年、通勤時間片道2時間半という出向命令(管理職手当の不支給も含む)が出された等のケースにおいて、退職勧奨及び両命令の違法性が認められ、慰謝料100万円等が認容されている(兵庫県商工会連合会事件 神戸地姫路支判平24.10.29 労判1066-28)。
  • 満65歳に達した従業員に対する退職勧奨について、これを承認しない者に対する賃上げ不実施と、定額の一時金支給を定めた労働協約の定めは、従業員の高齢化による労務費の高騰と経営状態の悪化から取り結ばれたものであって、動機や目的に不合理な点はないと判断されている事件もある(東京都十一市競輪事業組合事件 東京地判昭60.5.13 労判453-75)。もっとも、この事件については、裁判所が、加齢に伴う労働能率の低下と適切な処遇、協定を結んだ手続やその過程、他の競輪場及び他産業での高齢従業員の取扱い・賃金水準を細かく検討した上で判断していることに注意が必要である。

まとめ

実際の交渉では、上記のような事例を引き合いに出して、退職勧奨してきた上司と対峙することで、法律でマウントをとり、交渉を有利に進めましょう

具体的な相談は厚生労働省 総合相談コーナーでも案内されている。

アイキャッチはsuccoによるPixabayからの画像

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